一般的にエメラルドは5月の誕生石として知られ、また結婚20周年および35周年記念(日本では55周年)の宝石でもあります。
エメラルドは身に着ける人により高い知性と機知を与える力があると言われ、大切な方へのプレゼントとしても人気です。
エメラルドってどんな石?
エメラルドはベリルという鉱物種の緑色から緑青色の変種です。
鉱物:ベリル
化学組成:Be3Al2Si6O18
色:鮮やかな緑色
屈折率:1.577〜1.583
複屈折率:0.005〜0.009
比重:2.72モース硬度:7.5~8
和名は「翠玉(すいぎょく)、緑玉(りょくぎょく)」。
エメラルドの歴史
エメラルドはまさに古代からある宝石で、すでに紀元前4000年にはバビロニアの人々がエメラルドの売買をしていたらしいということが考古学的に証明されています。
上質のエメラルドを産出していたインカ帝国では、エメラルドは首飾りやペンダントなど、装飾に多用されていました。神殿までもがエメラルドで埋め尽くされていたといいます。
エメラルドはクレオパトラが愛した宝石だと言われます。エメラルドのジュエリーをたくさん身につけ、エジプトを訪れる要人には自分の似顔絵を彫った大きなエメラルドを贈りました。エジプトのエメラルドは、クレオパトラが生まれるおよそ2000年前に採掘が始まりました。在位中、クレオパトラはエメラルドの鉱床も、世界最古のペリドットの産地である霧深い無人島ザバルガット(英名セント・ジョーンズ島)も、すべて自分のものであると主張したといわれています。ザバルガット産のペリドットは、ニッケルを多く含むため、独特のエメラルドのような色をしています。クレオパトラの「エメラルド」の多くがのちにペリドットと判明したのも、そのためかも知れません。
現在の「エメラルド」という名前が使われはじめたのは、スペインがインカ帝国を支配し、ヨーロッパにエメラルドを流通させるようになってからだとされています。
エメラルドの語源は、サンスクリット語で「緑色の石」を意味する「スマラカタ」にあり、ギリシャ語では「スマラグドス(smaragdos)」から変化。そして現在の、「エメラルド(emerald)」になったといわれています。
エメラルドの原産地
エメラルドの主な産地は、コロンビア、ブラジル、ザンビア、ジンバブエ、マダガスカル、パキスタン、シベリアなどがあります。中でも最大の産出国はコロンビアで、世界シェアは60%を超え、名品としても有名です。
コロンビア産のエメラルドは、鮮やかな緑色で知られるひときわ優れた質を誇っています。伝統的にも評判からも、コロンビアは現在、最高のエメラルド産地と言えるでしょう。コロンビア産エメラルドは比較的大粒の原石を産出するため、大きくなるにしたがって1カラット当たりの価格の上昇がゆるやかになるので、大粒のものが他の宝石に比べて割安です。
ブラジル産のエメラルドは、明るい緑から濃い緑、そしてやや濃い青緑まで、様々な色を持つことで知られます。淡い色合いで内包物の多いエメラルドが多いですが、中にはブラジル産のエメラルドでも素晴らしいエメラルドが見つかることがあります。
ザンビア産は暗めの石やグレーがかった色合いの石、黒い内包物のある石が多いのですが、カボションカットの中には時折、非常に美しいものもございます。全体的に内包物の量が多いので、品質的にはカボションになるものが一般的ですが、ザンビア産の一部のエメラルドには高品質のものもございますので、色や品質の見極めが肝心です。
シベリア産エメラルドは、その息を飲むような透明度と深緑の色合いで長く尊ばれてきました。
上質なエメラルドとは?!
品質を決定づける要素は大きく四つ、『色』『クラリティ』『カット』『カラット(重量)』とあります。
色
最も望ましいエメラルドの色は、鮮やかな色で明度も暗くなく、帯青緑色から純粋な緑色です。
黄色や青みの色相が強すぎると、その石はエメラルドの色範囲から外れベリルの別の変種となり、価値はそれに応じて低くなります。
クラリティ
エメラルドは非常に内包物が多い石なので、透明度が高く鮮やかになるほど高級とされ価値が高くなります。
エメラルドには、一般的に肉眼で見えるインクルージョン(内包物)が含まれています。 このため、業者や一部の消費者はエメラルドにはインクルージョンが存在するものと理解しており、それを容認しています。
エメラルドのインクルージョン(内包物)は、苔や庭園を見ているようだと表現されることがよくあり 、フランス語で庭を意味する「ジャルダン」と呼ばれることがあります。
一般的に、結晶中に取り込まれたインクルージョン(内包物)は少なければ、その品質に影響を与えないのですが、インクルージョンが非常に多い場合だと、透明度にマイナスの影響を与え、石の価値は大幅に下がります。
カット
エメラルドにはその結晶形から一般的に、「エメラルドカット」と呼ばれる長方形のステップカットが施されます。
エメラルドは比較的に脆い石で、カットや研磨、セッティングの際に損傷を受けやすく、そういった負担を減らすため「エメラルドカット」は考案されました。
エメラルドの色を最大限に引き出すために、薄い色の石は深くカットし厚みをだして色がより濃く見えるように、暗い色の石は浅いカットで薄くすることで光を取り込み明るくすることができます。
カットによって色相、色調、彩度の効果が変わるため、元の石の持つ色にどれだけ良い影響を与えられるかが重要です。
カラット(重量)
エメラルドは密度が低いため、同じ1カラットでもダイヤモンドより大きく見えます。
エメラルドにはさまざまなサイズがあり、1カラット未満のエメラルドもあれば数百カラットの大きなエメラルドもあります。
品質が同じであれば、エメラルドの価格はサイズが大きくなるにつれ、大幅に上昇します。一般的に、センターストーンとして人気のある石は0.5~5カラットです。高級ジュエリーには、10カラット以上のエメラルドが使われることもあります。
処理について
多くの宝石はより美しくするためにいろいろな処理がされています。主としては熱処理、オイル処理、放射線処理等があります。
現在のほとんどのエメラルドに無色のオイルまたは樹脂が含浸されています。面キズと呼ばれる、内部から表面に出てくるわずかな亀裂にオイルや樹脂を浸透させてより美しく見せる加工が施されているのです。化粧程度の含浸は何百年にもわたって行われていて問題は少ないのですが、含浸の程度の激しいものは一見良品に見えても、経年変化でキズがはっきりと見えて美しさを失う恐れがあります。面キズの大小は善し悪しの決め手となります。
ノンエンハンスメント(無処理)のエメラルドはエメラルド全体の0.0001%未満と言われており、その中でも本当に美しいノンエンハンスメントのエメラルドは10万個のエメラルドの中に1個あるかどうかで非常に希少です。
取り扱いの注意点と保管方法
エメラルドは内部に傷が多い石のため、衝撃には気を付ける必要があります。
柔らかいブラシと温かい石鹸水を使用してやさしく洗うとエメラルドを最も安全に洗浄できます。
天然エメラルドの大多数は、傷の部分をオイルや樹脂で充填処理されています。そのため乾燥によってオイルや樹脂が蒸発してしまったり、洗浄で抜けてしまったりすると、もともとの傷が目立ってくることもあるようです。
エアコンの風や直射日光による乾燥を避けるためにも、エメラルドはジュエリーボックスに入れて保管すると良いでしょう。
売却する際のポイント
購入時に宝石鑑別書を入手されている場合は、商品といっしょに持ち込むことをお勧めします。
鑑別書に、産地であったり石の評価が記載されている時もあるので、査定がアップすることもございます。
宝石の査定は、専門的な知識が必要なため、的確な査定をする能力を習得するのにたくさんの時間を要します。
ですので、宝石は商品を査定するバイヤーの力量などで大きく金額が変わる商材です。
過去には、こういった記事がございました。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ24H1R_V20C15A6I00000/