あなたの家にも金貨があるかも?4分の1の家庭にあると言われる金貨
金貨、、とても心が躍るワードです。
多くのお問い合わせがある「天皇陛下御在位60年記念硬貨」ですが、何で皆さんそんなに金貨を持ってるのだろうと疑問に感じていましたが、後述する発行枚数を知ると多くの方がこの金貨をお持ちの理由が分かりました。
日本人にお馴染みの金貨「天皇陛下御在位60年記念硬貨」ですが意外とその詳細やストーリーは知っている方は少ないかもしれません。私もブログを書くにあたって調べるにつれて、この金貨の持つ歴史的な面白さを感じました。天皇陛下御在位60年記念金貨をお持ちの方は、改めてその物語を知り価値を再確認してみて下さい。
基本データ
天皇陛下御在位60年記念硬貨は、昭和天皇の在位60年を記念して発行された10万円硬貨です。記念硬貨としては初めて素材に金が用いられました。
天皇陛下御在位60年記念硬貨の基本的なデータをご紹介します。
図柄表 | 鳩と水 |
図柄裏 | 菊の御紋章 |
デザイナー | 平山郁夫 |
金品位(金性) | 純金(K24) |
重量 | 20g |
直径 | 30mm |
額面 | 100,000円 |
図面は平山郁夫によるもので、鳩は平和を水は日本の自然や稲作文化を表現していると言われています。
発行年数 | 発行枚数 | 備考 |
1986年11月(昭和61年) | 1000万枚 | 約900万枚が引換えられ、残りは鋳潰された。 |
1987年5月(昭和62年) | 100万枚 | 約12万枚がプルーフ金貨としてプレミアム価格で販売された。 |
天皇陛下御在位60年記念硬貨は昭和61年と昭和62年に発行されています。昭和61年の発行枚数は1000万枚と非常に多く造幣されています。厚生労働省のデータによると昭和61年の日本の世帯数は3754万世帯ですので、単純計算で4世帯に1枚の確率で天皇陛下御在位60年記念硬貨があったことになります。
これだけ多く発行されていると知ると私の家にもあるかもと思えてきませんか?
記念硬貨って今でも使えるの?
記念硬貨は現在も利用する事が可能です。通常の硬貨ととは大きさや素材が異なる場合があり、自動販売機や、セルフレジの普及によってスーパーやコンビニでの支払いにも使用できないケースもあります。
記念硬貨を使うにはどうしたら良い?
記念硬貨は銀行で交換が可能です。額面通りの両替になるので、プレミアがある記念硬貨を両替すると損をしてしまう可能性もあります。特に「天皇陛下御在位60年10万円金貨」「平成天皇御即位記念10万円金貨」「皇太子殿下御成婚記念5万円金貨」といった金貨は、金相場の上昇に伴い、額面以上で売る事が可能です。使わない記念硬貨は鑑定士に見てもらう事をお勧めします。
天皇陛下御在位60年記念硬貨にまつわるお話
発行前夜
天皇陛下在位50年の際も金貨の造幣が検討されましたが、造幣に必要な大量の金を準備する事が叶わず計画は中止されました。昭和60年(1985年)頃は金相場が2000円台で安定していた時期でしたので、政府は金貨造幣に踏み切りました。
それまでの記念硬貨は白銅貨が多く、額面は100円や500円が主流でした。これは現行貨幣の額面を超える貨幣を発行出来ない法律があったからですが、特例法により10万円の天皇陛下御在位60年記念硬貨は発行が可能となりました。
発行
昭和60年に第三次中曽根内閣により天皇陛下御在位60年記念硬貨の発行が決まり、昭和61年には1000万枚の高価が金融機関を窓口に引き換えられました。約900万枚が引き換えられ、未引き換え分は鋳つぶされました。
前年の人気を受けて昭和62年にも100万枚が発行されました。その内、約12万枚は「プルーフ加工」がされ、通常の硬貨よりも約10%程高いプレミアム価格で販売されました。これは日本初の一般販売向けプルーフ金貨です。天皇陛下御在位60年記念硬貨には、昭和61年銘と昭和62年銘が存在します。とは言え1/10しか発行していない62年銘に目に見えてプレミアム価格が付いているということは現時点では確認出来ませんが、コレクター心をくすぐるコインです。
記念硬貨発行には政治的な思惑があった?
記念硬貨なので裏心なく素直に60年の在位を祝福する硬貨として発行された思いたいのですが、初めて素材に金が採用された事、額面の大きさ、発行数の多さから、政治的な思惑があるのではと噂されていました。
天皇陛下御在位60年記念金貨の原材料は額面の半分以下と言われています。当時の人々は地金価値(当時の金相場で約4万円の地金価値があった。)以上の硬貨を10万円で購入しているという認識はあったはず。記念硬貨なので購入後は大事に保管する人が多く、通貨として市中に出回る量は少なくなり、その多くが退蔵されると予測されていました。結果的に日本政府が利益を得る事になるのではという議論が当時の国会でも議論されていました。天皇陛下御在位60年記念硬貨の発行には政府の財源確保の意図もあったとも考えられており、当時の大蔵省理財局長 窪田 弘氏はこのように発言しています。
「・・前略・・去年(昭和60年)の秋に計算いたしました額で六千七百億円程度の原材料費になっておりますが、それからコストを要し、また補助貨回収準備資金に積む、留保いたす額が一千億ございますので、それを差し引きました残りを一般会計に繰り入れる額が二千七百億円ということでございます。・・後略・・」
ちなみにこの時の原材料の金は海外から仕入れています。その量なんと200トン。当時の日本は円安ドル高で輸出産業が伸長している時代です。逆に輸出先のアメリカは対日貿易赤字や防衛費拡大による財政赤字(双子の赤字とも言われます。)で苦しい時期でした。そこからプラザ合意により円高が進んでいくという歴史です。議事録では対アメリカの貿易摩擦を緩和する目的で大量の金を買うのでは?と言う追及がされており、当時の時代感を見て取れる興味深い内容です。
お時間のある方は、国立国会図書館の”第104回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 昭和61年4月18日”の委員会答弁をご覧ください。
金貨の種類
天皇陛下御在位60年記念硬貨は「通貨型金貨」として金融機関で両替として引き換えが行われました。ちょっと話が逸れて金貨の種類についてお話します。金貨は大きく分けて3つに分類出来ます。
地金型金貨・・メイプルリーフ金貨、カンガルー金貨等。額面が設定されている為、通貨としても使用ができる。一般的に額面が地金価値より低く設定されているものが多い。
収集型金貨・・キャット金貨、ソブリン金貨、インディアン金貨等。コレクション性があり投資目的での所有も多い。
通貨型金貨・・天皇陛下御在位60年10万円金貨等。通貨として額面通り使える。
通貨型金貨は金貨の中でも、金の含有量に対して額面が大きいという点でレアな存在です。例えば1オンスのメイプルリーフ金貨の額面が50ドルですが、2023年6月時点だと地金としてみれば1オンス=31.1g×9000円=約280,000円の価値があるのに対して、通貨としても使用すれば50カナダドルは約5200円(1カナダドル105円として)の価値になります。
天皇陛下御在位60年記念硬貨が発行された当時の日本国内の金相場は2000円前後で推移していました。1枚あたり20gなので、地金価値は2000円×20g=40,000円でしたが、額面として10万円の価値も持っています。先ほどのメイプルリーフ金貨に比べると額面の大きさがお分かり頂けると思います。
後の記念硬貨に与えた影響
天皇陛下御在位60年記念硬貨を語るうえで外せないとパックが、1990年の大量偽造が発覚した事件です。10万枚を超える偽金貨が発覚しました。この事件を受けて、日本で発行される記念金貨には偽造防止対策がされて行く事になりました。
平成の天皇陛下御即位記念金貨では、ブリスターパックに認証番号やホログラム加工といった偽造対策がなされています。
御在位60年記念金貨は、ブリスターパックの形状が正方形です。
御即位記念金貨は、ブリスターパックが長方形になり、認証番号やホログラムがあります。
銀貨と白銅貨
天皇陛下の御在位60年を記念した硬貨は金貨だけでなく、銀貨や白銅貨もあります。
額面 | 発行年 | 発行枚数 | 重量 | 直径 | |
銀貨 | 10,000円 | 昭和61年 | 1000万枚 | 20g | 35mm |
白銅貨 | 500円 | 昭和61年 | 5000万枚 | 13g | 30mm |
発行枚数が多いので、今後プレミアがつく可能性は低そうですが、銀の価格次第では市場価値が上がっていく可能性はあります。
天皇陛下御在位60年記念一万円 銀貨
天皇陛下御在位60年記念500円 白銅貨
天皇陛下御在位60年記念硬貨は面白い金貨
天皇陛下御在位60年記念硬貨について調べてみると、日本初の記念金貨である事、偽造事件が起こったこと、その後の金貨偽造防止の転換点になった事、金貨造幣に政治的な思惑があった事など面白い話しを知ることが出来ました。皆様もお持ちの金貨やコインを調べてみて、その歴史を楽しんでみてはいかがでしょうか。