サファイアってどんな石?
サファイアの鉱物名は、ルビーと同じコランダム。
コランダムの中で赤いもののみがルビーと呼ばれ、赤以外の石はすべてサファイアに分類されます。
青以外のサファイアは、「ファンシーサファイア」と呼ばれますが、一般的には色相名を前につけて、オレンジサファイア、グリーンサファイア、パープルサファイア、バイオレットサファイアなどと呼びます。
サファイアの語源は、ラテン語で青を意味する「Sapphirus(サフィロス)」です。和名は「蒼玉(青玉)」。
サファイアの歴史
サファイアに関しては世界各地で様々な言い伝えがあり、人々からあがめられてきた歴史があります。
古代ギリシャ時代や中世ヨーロッパでは、サファイアは目に良い宝石として信じられていました。また、毒薬に対する解毒剤としても信じられていました。
ペルシア人は地球が巨大なサファイアによって支えられていると信じられ、空の青はそのサファイアがもたらす青なのだと言われていました。
サファイアの原産地
古くから、マダガスカル、タンザニア、スリランカ、ミャンマーなどの様々な産出地で採掘されています。 近代以降は、タイ、カンボジア、ベトナム、ナイジェリア、米国のモンタナ州、オーストラリアなども主な産出地となっています。
スリランカ
スリランカは歴史的に非常に大切なサファイアの産出国として知られています。島国であるスリランカで採掘されたサファイアは、5億4千万年から6億8千万年前の間に形成されました。 上質のサファイアは、透明度が高く、紫がかった青色が特徴です。産出量の70%は無色に近いギュダと呼ばれるサファイアですが、加熱手法により、結晶中に含まれるチタンと鉄が化学反応し、濃い青色に変化します。スター効果が出るスター・サファイアの多くはスリランカで産出され、古くから人々に愛されてきました。
カシミール
1881年に、インドとパキスタンの国境に位置するカシミールの山岳地域(4000~6000メートル)から彩度の高い、美しいコーンフラワー・ブルー、ベルベティ・ブルーと呼ばれるサファイアが大理石中から発見され、イギリスの王室の御用達としてとても愛されてきました。豪華なリングやブローチに使われたカシミールサファイアは、とても柔らかい青色を呈し、上品でとても落ち着いた色合いです。100年の採掘を終え、その希少価値は非常に評価され、カシミール産のものが最も高いプレミアム価格が付きます。
ビルマ(ミャンマー)
ミャンマー産サファイアの産出量はルビーと比べ、圧倒的に少なく、著名な鉱山モゴックから採掘されています。その特徴は大粒で青色が濃く美しいことです。しかも、ディープ・ブルーを呈し、彩度の高い「ロイヤル・ブルー」と呼ばれる貴重なサファイアはミャンマーの代表的なものであります。
マダガスカル
1993年から1998年にマダガスカル島の南部にあるアンドラノンダンボ地域とイラカカ地域の変成岩にサファイアが次々と発見され、国際宝飾市場に著しい高品質のサファイアが提供されるようになりました。宝石学的にも化学組成的にも、スリランカ、ミャンマーそしてカシミール産サファイアとよく類似しているため、産地識別に大変な困難が生じています。多くの原石が加熱処理され、非加熱のサファイアはごくわずかです。
ナイジェリア
ナイジェリアでもサファイアが産出されますが、採掘が始まってまだ20~30年程度しかたっておらず、安定した産出には至っていません。しかしここで産出されるサファイアの中には、スリランカ産に近い紫がかった最高品質のものもあり、今後の動向が注目されています。
オーストラリア、カンボジア、タイ
ゴールドラッシュの流潮に伴い、オーストラリアで世界最大を誇るサファイア鉱山が相次いで発見されました。1850年代後半から本格的に採掘を開始し、世界の半分以上のサファイアはオーストラリア産といわれるほどでしたが、アジアにおいても1875年にカンボジアのパイリン地域から同様のサファイアが産出されるようになりました。これらの産地から採掘されたサファイアは、火山岩の一種である玄武岩起源であり、青色が大変濃すぎて美しさに欠けているため、加熱して淡くしなければ、ジュエリーに使えないほどのものでした。1960年代に産出量は激減し、現在に至ります。1980年から、タイのチャンタブリとカンチャナブリ県に分布する若い玄武岩質のマグマからサファイア鉱床が大規模に採掘され、世界的な産地となっています。青色の濃いサファイア以外に、グリーンサファイア、イエローサファイア、ブラックサファイアなどが商業的に採掘の対象となっています。
上質なサファイアとは?!
品質を決定づける要素は大きく四つ、『色』『クラリティ』『カット』『カラット(重量)』とあります。
色
ダイヤモンドは透明なほど良いとされていますが、色石の場合、好みによるところも大きいのではないかと思います。
ここでは、世界で現在最も価値が高いとされている『ロイヤル・ブルー』と『コーンフラワー・ブルー』についてふれておきます。
『ロイヤル・ブルー』
強い鮮やかな彩度をもったサファイアは「ロイヤル・ブルー」と呼ばれています
ミディアム~ミディアムダークの色調で、ベルベットのように滑らかな濃い青色です。
かつて美しい「ロイヤル・ブルー」サファイアはイギリス王室御用達で、カラットあたりの最高価格の価値があり、特にミャンマーのモゴック地方から採掘された「ロイヤル・ブルー」のような大粒で美しいものはとても貴重です。
『コーンフラワー・ブルー』
彩度が高く、上品で非常に落ち着いた色合いのサファイアで、矢車草の色に近似するブルーです。
1881年にインド・パキスタン国境に位置するカシミールの山岳地帯から、柔らかな白みがかった色と、すみれ色がかったサファイアが産出されました。このようなカシミール産コーンフラワー・ブルーサファイアは、現在ほとんど産出されないですが、スリランカやマダガスカルにも同様な美しいものが少量ですが産出されます。
クラリティ(透明度)
一般的にブルー サファイアには内包物がいくらかありますが、クラリティは通常、ルビーよりも優れています。極度に高いクラリティを持つブルー サファイアはまれであり、非常に価値があります。
通常、インクルージョンは石の価値を下げてしまいます。インクルージョンが石の耐久性を損なう可能性があると、価格が大幅に低下する場合があります。
それにもかかわらず、実際にインクルージョンがサファイアの価値を高めることもあります。
最も価値のあるカシミール産サファイアの多くには微小な内包物が含まれており、ビロードのような滑らかな外観を与えています。これらは光を散乱させ、宝石の透明度を損なうことなく、切望されるその視覚的な効果を発します。
カット
サファイアの結晶原石の形状は、石の研磨加工後の形状とサイズに影響します。
サファイア原石の最も一般的な結晶形は、バレル(樽形)型またはスピンドル(紡錘形)型の六角錐状です。
全体的に最高のカラーとプロポーションを作り、歩留りをできるだけ最大にするため、カット職人はカラー ゾーニング、多色性、そして結晶の明るさまたは暗さのような要因に注目して、石をカットする方向を判断します。
カットによって色相、色調、彩度の効果が変わるため、元の石の持つ色にどれだけ良い影響を与えられるかが重要です。
カラット(重量)
ブルー サファイアのサイズは数ポイントから何百カラットまでにわたり、大きなブルー サファイアは、大きなルビーよりも入手し易いです。しかし、ほとんどの量販品質のブルー サファイアの重量は5カラット未満です。
カラットの大きい”大量生産品質”のブルー サファイアは稀少ですが、カラットの大きい”上質”なものよりは簡単に入手できます。
したがって、上質なサファイアの価格は、サイズによって違いがより大きくなります。
処理について
多くの宝石はより美しくするためにいろいろな処理がされています。主としては熱処理、オイル処理、放射線処理等があります。
現在市場で目にするサファイアのうち、9割以上、つまりほとんどのサファイアが加熱処理されたものだと言われています。
サファイアの加熱処理は、500~1600度もの高温で石を加熱し、化学反応を起こして淡い色の石を濃い目に変えたり、内部の汚れを除去したりする目的で行われます。
ただし、石の内部の組織を壊してしまうことも多いので、美しいインクルージョンを持つ天然サファイアにとっては、加熱処理が必ずしも最良の処理だとは言い切れません。
取り扱いの注意点と保管方法
宝石の硬度を測る「モース硬度」が9であるサファイアは、比較的硬い宝石です。
さらに優れた靱性を持っているため、日常使いしやすく、お手入れもしやすい宝石だと言えます。
家庭でしっかりケアする時は、中性洗剤を溶かしたぬるま湯につけ、やわらかいブラシでやさしくこすり洗いします。その後、真水でよくすすぎ、やわらかい布で水分をしっかりと拭き取ってください。
保管には、直射日光が当たる場所や湿気の多い場所は避けましょう。
売却する際のポイント
購入時に宝石鑑別書を入手されている場合は、商品といっしょに持ち込むことをお勧めします。
鑑別書に、産地であったり石の評価が記載されている時もあるので、査定がアップすることもございます。
宝石の査定は、専門的な知識が必要なため、的確な査定をする能力を習得するのにたくさんの時間を要します。
ですので、宝石は商品を査定するバイヤーの力量などで大きく金額が変わる商材です。
過去には、こういった記事がございました。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ24H1R_V20C15A6I00000/